笛吹き男がネズミを溺れさせた [事件事故]

その後、様々なうわさが飛び交い、南の島の保険金疑惑事件として、週刊誌やテレビのワイドショーの格好の話題となった。
私のところにも同じグループで同行したということで週刊誌3社が取材に来た。
黒塗りの社旗を掲げた車で来られたのだった。
私が言ったとはわからないように記事を書いてくれる、とのこと。
ある週刊誌は、取材のお礼として後に5万円も振り込んでくれたのは驚き。
とりあえず知っていること、田山氏が現地の空港で必死で彼女の荷物をかき回していたこと、
夜に泳ぐとはあり得ない時間に泳いだこと、田山氏の足の指がギザギザに切れていたことなど、
大したヒントとは思えないようなことを話しただけなのに。
 結局、24歳の妻にかけられた保険金は保留のようだった。
不思議な偶然の一致があった。
ハーメルンの笛吹き男、という伝説には、笛吹き男が町中のネズミを川に連れて行って溺れさせた、
しかし市長が約束の報奨金を払わなかったので怒った笛吹き男は町中の子供を連れて山の向こうへ行ってしまった、となっている。
笛吹き男は英語でパイドパイパーというのだが、田山氏の経営していた店の名前が「パイドパイパー」だった。そして調べると妻の生れ年がネズミ年。
私はザルツブルグの墓地を見学していたときに、笛吹き男の霊を同行してきてしまったのかもしれない。笛吹き男は子供らを誘拐したあとに、オーストリアで金持ちになってザルツブルグの墓地に埋葬されていたとすれば。
そして、パイドパイパーの店主に乗り移ってから、ネズミ年の妻が溺死するのを見ていたのかもしれない、なんて妄想をしたのでした。
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南の島から帰国 [事件事故]

南の島の病院で、溺れた女性の遺体と彼女の夫が休んでいる病室の外の廊下で徹夜をした私と夫は睡眠不足とか疲労とか感じる暇もなく、田山氏と遺体と一緒に機内の人となった。
1月の始めとあって飛行機は満席だったが事情が事情だけあって無理に開けてもらった席だった。
田山氏が窓際、私、夫という順に座っていた。 噂で知った乗客が、遺体はどこ?と聞くので、この床下と説明すると、はあ、という感想。
経由した国では日本大使館の外交官が来て、通関手続きを簡単にしてくれたが、来る早々に、せっかくの来客でカレーライスを振る舞うところなのに、とぼやきつつ。
海外の大使館勤めなんて、いい加減なものだ、という印象でした。
成田へ着くと、手続きで忙しい夫の代わりに私が田山氏の車いすを押して税関を通った。
その後は夫に任せて私は先に家に帰ったが、その後成田まで遺体を迎えに来た彼女のご家族とは悲痛な対面だったという。
 なんと一泊二日か三日かわからないような南の島だったが、東京での葬儀には夫と私が参列させていただいた。仕事も始まり、普通の日々を送っていると、1週間後に夫の旅行会社に田山氏が保険の手続きに来たとのこと。葬儀が終わってまもなくなので、早いね、というのが感想だった。
 


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